原理原則ですから例外はありません

「マイクロラーニング」の原理原則は、「時間を短くすることで目の前の物事の成果を高める力」でした。時間を短くするということは時代が求めている「働き方の多様性」に通ずるものがあります。限られた時間でしか働けない時短勤務の従業員であっても、時間を短くした特定の会議であればアサインすることが可能になり、より多くの観点から議論が活性化するかもしれません。あるいは、ダラダラと続く会議の時間をマイクロ化(時短)することで、より論点を絞った会議に変えられれば、その会議の生産性を高めることにも繋がります。

最近は「物事の原理原則」を学びの中心にしています。ようやく人間が学び続けることの真の意味が分かってきたように思います。ある程度は仕事を行う上で浅く広い知識のインプットも行っていますが、時間は限られていますので、私は物事の道理を深く追求し、実践に生かせる学びに重きを置いています。では原理原則とは何か?というと、私は「物事(万物)の本質に適った考え方・生き方」であると理解しています。原理原則ですから例外はありません。厳しい表現かもしれませんが、自分が考えて実践した通りに仕事・人生の結果は表れてきます。仏教の世界ではこれを因果応報として昔から人々に伝えています。

どうしたら社員と心を通わせて信頼し合いながら働くことができるのか。どうやったら会社が正しく成長発展できるのか。これらの問題はあらゆる要因が絡み合っており、一見複雑で解決は難しいように思います。しかし、世の中で起こっている全ての現象は原理原則で成り立っていると考えて、複雑に見える問題を一つひとつ丁寧にひも解いていくと、非常にシンプルな答え(解決方法)を見つけることができると信じています。解決方法を見つけることができたならば、次は勇気を持って実践できるかどうかということになります。これも簡単なことではありませんから、日頃からトレーニングをしておかなくてはならないと考えています。

また、新人営業に限らず、商談採点表を作成するであったり、最近で言えばオンライン商談ツールに備わった録画機能を用いた商談アセスメントや振り返りによって、既存営業にも営業の原理原則を浸透させる方法もあります。

今回、トレンドワードを原理原則化し、そのエッセンスを抜き出すことで組織戦略の機能に取り込むことができないか、そしてその組織戦略に基づいて戦略人事を考えると一体どうなるのかといったテーマを扱ってきました。何度かの連載を重ねる中で、結果として「多様性」「生産性」というラインに収斂されていくという事が見えてきました。

第8回目となる今回は、ここまでの連載で取り上げた6つのトレンドワードを一度振り返り、それぞれの記事から見出された原理原則から更なる共通点を見出してみたいと思います。

この解説書は、アジャイル開発を実践している有識者によって作成が行われ、アジャイル開発の原理原則を読者が正しく理解できるよう、さまざまな工夫が凝らされている。たとえば、日本の企業風土や組織文化に触れているほか、“仕掛り”や“ムダ”といった、日本人に馴染み深いトヨタ生産方式で用いられている表現を使った説明がなされている。

“原理原則に従う”。これは京セラ株式会社の創業者である稲盛和夫氏がモットーとしている言葉である。この言葉は、いかなる時も“正しいものは何か”という基準を持って判断し行動することを意味している。原理原則に従うという考え方は、アジャイル開発を実践する場面でも必要不可欠となる。

そして、稲盛和夫さんからは、その原理原則を現代に落とし込み、一人の人間として・経営者として実践するための哲学(フィロソフィ)と具体的な取組事例を学ばせて頂いています。

京セラでは創業の当初から、すべてのことを原理原則にしたがって判断してきました。会社の経営というものは、筋の通った、道理にあう、世間一般の道徳に反しないものでなければ決してうまくいかず、長続きしないはずです。

今回の連載では7回にわたり、HR領域における「トレンドワード」を原理原則化することによって、そのエッセンスを「経営活動における各種機能(下図参照)」に対しても汎用的に転用できるのではないかという考察を行ってきました。

今回、この8回目で連載の一区切りをつける理由の一つに、どのトレンドワードも落ちていく着地点は近しいものであり、新鮮味が弱くなってきたこともあります。ただそれはよくよく考えれば当然のことなのかもしれません。世の中の人たちにキャッチアップされるトレンドワードは当然ながら世間の大きな方向性に沿うという本質的な構造があり、更にそれを原理原則まで掘り下げることでよりエッセンシャルな要素として鮮明に認識できるということだったように思います。

このように、マイクロラーニングそのものは「学びを短い時間で刻む」ということですが、その原理原則は世の中の大きなトレンドである「働き方改革」が示す「多様性」「生産性」という切り口に収斂されていきます。そしてこの考えは、強弱こそあれ他のトレンドワードにも当てはめることができます。

また、アジャイルソフトウェア開発宣言が掲げる12の原則に対する有識者の解釈を「基本的な考え方」として説明し、さらに基本的な考え方を実践するためには具体的にどのような行動を起こせばよいかを「行動規範」として示すことで、アジャイル開発の原理原則を実践しやすいよう配慮されている。たとば、解説書の原則04「全員で共通の目標に向かおう」では、ビジネス価値を最大化するために、発注者や開発チームを含む関係者全員が、成果物の価値やプロジェクトの状況、あるべき姿などを共有する必要があることを「基本的な考え方」で触れた上で、その基本的な考え方を実践するために、関係者全員が双方向にコミュニケーションを取ること、関係者全員が共通認識を持つためにドキュメントを作成することなどを「行動規範」として伝えている。

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