倫理原則とは
看護倫理は、すべての患者に質の高い看護を提供するための“指針”であり、自分本位ではなく患者を優先にした、看護における理想的な考えであるため、看護学生はもちろん、臨床経験豊富な方も、初心に戻って再度理解に努め、質の高い看護実践を行っていってください。
質の高い看護を行う上で重要となる「倫理」。看護学校ではもちろん、臨床においても度々その言葉を耳にしますが、「倫理」とは何か、なぜ重要なのかを、完璧に理解できていますでしょうか?
看護倫理とは、いわば看護師が業務を行う上で守るべき「道徳」や「規範」のことで、簡単に言うと、質の高い看護を提供するための「考え」や「行動」の指針のことです。
優秀な看護師とは、豊富な知識と高い技術を有している者に限りません。いくら知識と技術を有していても、倫理で提唱されている事項、つまり患者を優先した看護の考えに則して行動していなければ、優秀とは言えないのです。
指針が定まっていなければ、各看護師・病院が行うケアに大きな差異が生じてしまい、患者が適切な看護・治療を受けることができなくなってしまうため、看護倫理の存在やそれに準ずることは非常に大切なのです。
引用・参考文献
1)サラT。フライ、メガン-ジェーン・ジョンストン著、片田範子、山本あい子訳:看護実践の倫理―倫理的意思決定のためのガイド 第2版、日本看護協会出版会、2005。
2)Jonsen,A.R他著、赤林朗他監訳:臨床倫理学―臨床医学における倫理的決定のための実践的なアプローチ 第5版、新興医学出版社、2006。
3)宮坂道夫:医療倫理学の方法―原則・ナラティブ・手順 第3版、医学書院、2016。
看護においては、急速な医療技術の発展や社会情勢の変化に伴い、各人の価値観が多様化したことで、患者に最適なケアを提供することがますます難しくなってきています。それゆえ、すべての患者が最適なケアを受けることができるよう、行動指針となる看護倫理の存在や、それに準ずる精神は非常に大切なのです。
Step1:倫理的な問題で判断に困っている症例について、できる限り情報を収集する。
看護職の倫理綱領ではまず、命と人権を尊重することについて書かれています。
看護職は、人々の健康と生活を支援する立場です。
国籍や性別などのあらゆる側面に左右されることなく、患者さんの生命と尊厳、権利を尊重し、配慮をしていくことが求められます。
意思決定モデルを用いた事例検討を行うことで、看護師としての倫理的感性を養うことや、倫理的問題に対する意思決定能力を育成することにつながると確信しています。それでは次回から、Jonsenらの症例検討シートを用いて事例検討をしていきましょう。
そこで、臨床倫理学・臨床医学における倫理的決定のための実践的なアプローチ法として、「臨床理論の4分割法」が提案されました。これはカンファレンスに際する円滑な方針決定のための一つの考え方であり、「倫理綱領」や「倫理原則」にも準じています。
看護倫理は看護を実践する上での基盤です。倫理は、あらかじめ決まった答えが用意されているものではありません。結果だけに着目するのではなく、そのプロセスが重要です。そこに倫理の難しさ、面白さがあります。
また、私たちの生活の中でも、たとえば「妊婦や高齢者に席を譲る」、「落し物を交番に届ける」など、これも一種の倫理に当てはまります。
今日、看護を取り巻く環境は、新しい技術の発展や患者・家族の権利意識の高まり、看護師の役割の拡大などにより大きく変化してきています。したがって看護師は、日常的に多くの倫理的問題に遭遇し、さまざまな倫理的意思決定にかかわるようになってきました。そのため、倫理的な判断ができる看護師の育成は、看護の質向上に不可欠であると言えます。
医学には古くから伝統的な原則というべきものがありました。しかし、20世紀の医学が生み出した様々な倫理的問題に対して、それらの伝統的な原則では対処できず、医師など専門家の間(あるいは専門家と非専門家の間)での意見の不一致が避けられないことが明らかとなりました。そこで、見解の不一致を前提とした、倫理的な意思決定の方法が要請され、その試みとして、万人が合意でき、かつ様々な問題に応用できる原則のセットが考案されました。つまり、4原則が考え出された理由は、「意見の異なる人の間で共有可能で、なおかつ多種多様な倫理的問題に汎用可能な方法論が必要だったからだ」と言えるように思います。